澁谷道さんのこと
澁谷道さんが亡くなられたことを、人づてに聞いた。懐かしく、残念であった。昨年暮れに亡くなられ、葬儀は1月7日だったとか。晩年は大阪から弟さんがおられる浦和に転居されて医療付きの施設に入っておられた。私も正木ゆう子さんのおすすめもあり、一度だけ家内とお見舞に行ったことがある。...
ふらんす堂の百句シリーズは、対象俳人の俳業を俯瞰するのにとても役に立つ。選ばれた百句の解説だけでなく末尾の小論が、いつも楽しみである。その例にたがわず、該著は難解派とされている永田耕衣を理解する上で、この上ない好著である。耕衣の俳句の特徴を見事に腑分けして見せてくれている。...
ふらんす堂の百句シリーズ。2023年1月10日発行。 尾崎紅葉の俳句を、村山古郷は「初期の談林調からやがて正風、あるいは日本派流に近づいた」といっているが、高山はそうではなくて「談林まがいの破調句も、一見すると日本派と見分けがつかないような描写型の句も、月並調のようなひねり...
著者高岡修さんは現代俳句評論賞、現代俳句協会賞などを受賞した俳人で、詩人でもある。該句集は第九句集。2022年12月15日、有限会社ジャプラン発行。 冒頭の句である。 008 食卓の明かるい死体と朝のミルク 出鼻から驚かされる。一筋縄には解けない句である。テキストを睨みそこ...
小生がお世話している地元の「さつき句会」に所属しておられる青麻さんが句集を上木された。香菊さんは「山火」の福田蓼汀・岡田日郎主宰の流れを汲む俳人で、確かな叙景句を詠まれる方である。喜怒哀楽房、令和4年12月30日発行。 青麻香菊さんにはじめてお会いしたのは、学習院俳句会の吟...
向瀬さんは大輪靖宏さんの「上智句会」のメンバーで、山西雅子さんや櫂未知子さんの指導も受けておられ、かつ、フランス語圏の俳句協会にも所属しておられる。その第二句集。2022年12月24日、ふらんす堂発行。序文は大輪先生が書かれている。 自選12句は次の通り。...
池田さんの該著、懐かしく、あるいは、こんなことだったのか、との驚きを含めて、興味深く読ませて戴いた。2022年12月1日、ふらんす堂発行。 006 かもめ来よ天金の書をひらくたび 010 労働祭赤旗巻かれ棒赤し この句を私は、メーデーが終わった後の景を詠んだ写生句だと思って...
西谷さんは奈良の人。「幻」主宰で、奈良県俳句協会会長、関西現代俳句協会事務局長をされておられる。該句集は、幻俳句会句集シリーズ7にあたり、2022年5月発行。 小生が共鳴した作品は次の通り。 010 仕付け糸付けたるままの紋白蝶 013 鋤き込むやげんげにわかに匂い立つ...
西池さんが『臼田亞浪の百句』を上梓された(2022年12月24日、ふらんす堂)。副題が「寂しさの旅人」である。 亞浪の句をゆっくりと読むのは初めてである。河東碧梧桐—大須賀乙字に繋がり、虚子とももちろん交流があった亜浪だが、「石楠花」を興し、3000にも及ぶ門下生を育てたに...
家裁の調停委員の集まりで「八千草」(山元志津香主宰)の中の句会でもある「あざみの」の会のアンソロジーである。12名が自選各63句を持ち寄った。世話役の横川はつこうさんから送って戴いたので、早速読ませて戴いた。 みなさん熟達の俳人ばかりである。豊かな人生経験をベースに、来し方...
兜太現代俳句新人賞を受賞した小田島さんの第一句集。賞の副賞として協会からの一部助成を受けて、該句集を出版した。誠にお目出たい。小田島氏は1973年仙台生まれで、宮城県の俳句賞も戴いている。句集の序文は「小熊座」の高野ムツオ主宰。栞は、新人賞の選考委員であった小林恭二と穂村弘...
安井浩司と言えば、 鳥墜ちて青野に伏せり重き脳 姉とねて峠にふえるにがよもぎ ひるすぎの小屋を壊せばみなすすき 法華寺の空とぶ蛇の眇(まなこ)かな 麦秋の厠ひらけばみなおみな などを思い出す。妙な味のある句を多産する作家だった。「だった」と書いたが、あまり俳壇に顔を出す方で...
林さんは「草樹」(代表は宇多喜代子さん)のメンバーで、『歳華』につぐ句集。題名『致遠』は「遠いところに達する」の意。ご自身はご自分の目標を遠くに置いておられるようだ。一頁四句だて、91頁の句集。300句を収めた。 小生が感銘した句を抜き出しました。写生の目が効いた佳句が多い...
皆様から拙句集『SMALL ISSUE』に対するご意見を沢山頂戴いたしました。ここにその結果を纏めさせて戴き、お礼の気持ちを込めてご報告させて戴きます。 栗林 浩 令和4年12月吉日 記 句集上梓(令和4年6月)以降半年がたちました。お仲間や、総合俳誌、新聞、結社誌のほか、...
異例づくめの句集である。「群青」同人の小山君は若干二十五歳。俳句四季新人賞や星野立子新人賞を貰っている逸材であるが、今回、第一句集を出すにあたって、今まで用いてきた小山玄黙という俳号を捨て、本名で、しかも有季定型をすてて、自己の意思をつらぬいた。...
ドウマゴ文学賞など多くの賞を貰っておられる恩田さんは、あらためてご紹介するまでもないであろう。その第五句集である(角川文化振興財団、二〇二二年一一月七日発行)。 一読して、私には「感性」と「知性」の折り合いが見事な句集と思えて感じ入った。『はだかむし』なる題名は『大戴礼記』...
塙さんは能村研三主宰の「沖」の同人で、作句歴20年の方。序文は能村主宰が、跋文は森岡正作副主宰が、塙さんの人と作品を丁寧に紹介している。選句・構成には広渡敬雄氏が協力したとある。2022年10月22日、ふらんす堂発行。 装丁の美しさ、そして、和綴じ風というのだろうか、開き具...
高尾さんの第二句集。文學の森、令和四年十一月一日発行。氏は山本一歩主宰の「谺」の重鎮で、石川桂郎の「風土」から「琅玕」をへて現在に至り、谺賞や横浜俳話会のみなとみらい賞を貰っておられる。伊豆にお住いのようだ。 自選十句は次の通り。 薔薇剪つてそれからピアノ鳴らぬなり...