極めて貴重な『有馬朗人全句集』を戴いた。朗人先生の五三六九句と、年譜、解題、初句索引・季語索引を含め全五六四頁の大冊である(二〇二四(令和六)年五月二十八日、角川文化振興財団発行)。俳人有馬朗人を研究するに欠かせない完全資料である。
先生は二〇二〇(令和二)年十二月十日、ご自宅で心不全のため急逝された。小生は、先生にロングインタビューをお願いし、武蔵学園にお邪魔して、生い立ちや俳句についてのご高見を中心に、東大総長選のエピソードなども伺ったものである。その際の写真を載せておこう。インタビューの結果は、拙著『昭和・平成を詠んで』に収録してある。
相当に分厚い資料であり、短時間内に詠み終わることは無理であるが、ただ一つ特徴的なことに気が付いたので書いておきたい。
季語索引をみて驚いたのである。「白夜(はくや)」の項が異常に長いのである。それだけ「白夜」を詠んだ句が多いということである。六六句あった。例を挙げておこう。
抱き合ふロダンの像も白夜かな
ロシア文字堅し白夜の街固し
国境の白夜の駅や時刻表
日本国内では、なかなか「白夜」は詠みにくい。先生の作をみてみると、ほとんど全部が海外でのものである。小生もノールウエイなどを旅して、ムンクの絵や白夜の街の印象が記憶に残っているので、納得である。
ついでに「短夜」を調べると、これも多い。四九句あった。こちらは海外だけでなく、国内でも使いやすい季語である。
座右に置いて、ときどき繙いてみることにしよう。編集に当たられた門下の方々に、こころからお礼を申し上げます。ありがとう御座いました。
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