俳句集団が「年鑑」を出すのは珍しい。「俳句スクエア」(代表は五島高資、副代表は石母田星人、編集長は朝吹英和の各氏)の二〇二一年版が発行された。メンバー二十八名の作品各十一句が発表されているので読ませて戴いた。一年の作からの選ばれた、それぞれ思いの籠った各十一句だったであろう。
メンバーの略歴も付されており、多士済々とお見受けした。
僭越ですが、小生の共鳴した作品を各一句ずつ抽かせて戴きます。
009 乗り降りもなくドア閉まるレノンの忌 五島高資
010 バンクシーひとつ残して帰燕かな 石母田星人
011 家系図にありし黒塗り枯木星 朝吹英和
012 近づけば益々燃える躑躅かな 服部一彦
013 マリオネットのやうに仔馬立ちあがり 松本龍子
014 老木の語りつくせぬ木下闇 加藤直克
015 ポインセチア並びに自動検温器 十河 智
016 ながらへてなほ寒林になりすます 眞矢ひろみ
017 それぞれの皮膚は一枚原爆忌 大津留直
018 マドンナと云はれ此の方月見草 干野風来子
019 白椿十万世界寂びにけり 松尾紘子
020 旧年に脱いだブーツがもたれ合う 生田亜々子
021 昭和時代などと括りし昭和の日 珠 雪
022 ひいな仕舞う箱に小さき母の文字 於保淳子
023 蝋石の線路果てなき遅日かな 和久井幹雄
024 街中の桜が放つ周波数 児玉硝子
025 靑墨に罅あり夏の高野切 阪野基道
026 言語野の犯されてゆく花吹雪 平林佳子
027 持ち物の分からなくなる初仕事 眞島裕樹
028 こぼれ落ち映えるミモザの二月尽 大久保俊克
029 空蝉の数だけ地球穴だらけ 野島正則
030 花馬酔木お洒落な犬が降ろされて 石川順一
031 掃き清め真砂に映える落椿 石田桃江
032 水鳥も距離を保ちてしづかなる 毬 月
033 ハンカチに夫の秘密の匂ひあり 歌代美遥
034 ヒーローになり切つてゐるマスクかな 菊池宇鷹
035 箸置きをそっと置く手や梅の花 中川洋子
036 さくらさくら小犬まあるく眠りけり 今井みさを
有難う御座いました。貴会のご発展を願っております。
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