家裁の調停委員の集まりで「八千草」(山元志津香主宰)の中の句会でもある「あざみの」の会のアンソロジーである。12名が自選各63句を持ち寄った。世話役の横川はつこうさんから送って戴いたので、早速読ませて戴いた。
みなさん熟達の俳人ばかりである。豊かな人生経験をベースに、来し方を懐かしく詠んだ句、海外旅行の非日常性を詠んだ句、人生訓にも通じる寓話的な句、うからへの溢れるような情を詠んだ句……いろいろ楽しませて戴いた。
中から小生の好みに従って、各3句ずつ選ばせて戴いた。もっとたくさん戴きたかった感がある。
010 雛飾る嫗の一人遊びかな 上田彩子
020 縁側に無言の父子盆の月
025 熱燗や父の娘でありし頃
030 戰なき七十年や白泉忌 扇谷正紀
038 桟敷席涼呼ぶ白いワンピース
043 小三治のまくら聞きたし秋の夜半
051 底冷えの京の仏の微笑かな 柿沼正之
065 那須の秋熊が噂の足湯かな
069 ドクターストップ明けて蕎麦屋のお燗酒
077 岩田帶を授かる吾娘(あこ)に風光る 木下一子
082 客去りて鉢の金魚に語りかけ
086 松手入れ枝に倣いて夫傾ぐ
095 塩少し控えし今朝の雑煮椀 小暮 航
100 蓮根は穴が旨いと百閒忌
103 乳足りし孫のあくびや柿若葉
117 探梅や間道多き奥高尾 佐藤友技子
130 塩屋崎秋渺渺とひばりの碑
134 しぐるるや煉瓦倉庫の深き赤
138 鉄橋の音よく響く寒四郎 神宝 浩
140 野遊びへ子は恐竜を握りしめ
145 梅雨深し振れど動かぬ塩の瓶
162 雪だるま溶けてゾンビの顔二つ 高宗俊雄
174 起重機の並ぶ天守や鰯雲
177 預金箱振ればからから暮れの秋
188 北斎の生え際美人春の雨 近松ほうし
192 ヒト属は見飽きてゴリラ三尺寢
197 秋想う京終(きょうばて)駅の「駅ピアノ」
206 絵硝子の色やわらかに春兆す 宮本仁美
206 オルガンの止みし聖堂冴えかえる
210 月日貝海にも宙(そら)のあるらしくき
226 美濃紙に朱金の文鎮筆始め 渡辺和子
228 賜物の光の中に蒲団干す
230 梅林に日は燦として山静か
248 噺家の鶏の声音(こわね)や年新た 横川はつこう
254 犬の棺囲みて家族花の雨
263 鳥渡る本郷菊坂かけはぎ屋
有難う御座いました、横川様。
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