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塚田佳都子句集『はなかつみ』



 塚田さんは「風鈴」青木千秋主宰)、「伊吹嶺」(栗田やすし主宰)、「好日」(長峰竹芳主宰)、「草樹」(宇多喜代子代表)で俳句を学んだ。その第三句集で、二〇二四年十月十七日、東京四季出版発行。帯は宇多さんが、この句集には「日々の折々の出来事や見逃しそうな些事にひそむ一瞬の輝きがあふれています」と書いている。美しい表紙に気が付いたが、髙林昭太氏の装幀であった。序句〈花びらを掬うて夢のまだ続く〉は高橋健文「好日」主宰。


自選十二句は次の通り。

 

 少年のベース通奏木の根開く

 百年前百年のちの土筆とわたし

 野に山に音符を咥へ鳥の恋

 行く春の人はせつせと手を洗ひ

 燕来る世界の母は戦を憎む

 夏霧の包む一樹を見失はず

 八月の海に柱の立ち上がる

 二百十日ぎざぎざの水平線

 平凡な日々のつづきの桃傷む

 ねこじやらし一本抜けば風さわぐ

 散り紅葉窮屈な言葉を逃れ

 転轍機下ろされ列車枯野へと


 小生の共鳴句は次の通り。


038 遠浅の眠りのつづく熱帯夜

062 胡瓜噛む音のすてきな人とゐる

070   奥の細道

    一笑の塚は動かず鰤起し

073 片減りの墨の馴染みし霜夜かな

088 返信のやうに戻りし秋の蝶

094 勿忘草ガラスの沓のインク壺

099 木綿のハンカチきちんと畳みひとに逢ふ

101   横須賀の軍港

    梅雨寒や潜水艦に赤い旗

123 空き箱に何か詰めたき二月かな

134 打水や岐阜提灯に灯が点り

145 うごく水動かざる水冬に入る

166   悼 高野公一さん

    羽を持つ亀が空ゆく夏の月

174 芒原先頭の人から消える


 小生のイチオシの句は次の句。


166   悼 高野公一さん

    羽を持つ亀が空ゆく夏の月

 小生が「山河」(当時は松井国央代表、現在は山本敏倖代表)にお邪魔していた頃、高野さんとよくお話しした。見識の広い方で、現役時代は、大企業の専務をなさっておられた。動脈剥離で急逝されたのは残念であった。その句集が『羽のある亀』で、私の好きな句が沢山あったのを覚えている。この塚田さんの句に出遭い、懐かしく思った。好きだった高野さんの句を挙げておこう。

 

落蟬のままで一度は鳴いてみる

  涅槃図に死んでいるのはただ一人

  国宝の臍の涼しき土偶かな


 塚田さん、有難う御座いました。

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