俳誌「星雲」(故鳥井保和主宰)の後継誌として、「鳥」が創刊される。今回はそのカウントダウン0号として、美しい翡翠を表紙に飾った「鳥」0号が出された。代表は小川望光子氏。主宰制は取らず、鳥井の「有季定型」「自然随順」「景情一如」を継承するとのことである。
祝意を以って、メンバー各位の作品から、一句ずつを抽かせて戴いた。
03 風冴ゆる砲台跡の伝声管 天倉 都
耕すや土の膨れと陽の膨れ 新井たか志
04 日の温み残る石垣落椿 池田邦子
耕すや一塊の土にも生命 板敷清光
春愁や師の添削の朱の文字 伊藤享江
船頭の艪で割く濠の花筏 井上治宝
05 にぎやかに咲いて静かなシクラメン 内山恭子
野火走り翼あるもの高く飛ぶ 岡本 敬
耳成も畝傍も香久も冬日中 小川望光子
壺に一枝わが死の際も梅が佳し 奥井志津
06 間延びした呼び出しチャイム春うらら 柏原京子
遠足の女教師ピアスかがやかせ 木下恵三
咲き満ちて桜さながら大庇 窪田かづ江
新しき星を加へる冬の空 小林邦子
07 入学子母を目で追ひ整列す 佐藤富子
噴煙の阿蘇を背に麦を踏む 澤 禎宣
釣宿に魚拓の増えてうららけし 園部知宏
可惜夜の寒星粋を極めけり 竹内正與
08 里富士の裾野は浄土桃の園 竹本治男
春浅し遠流の島に外国船 田島和子
長閑なる遅れ刻告ぐ古時計 谷本町子
初虹や橋に北詰南詰 土江祥元
09 花の雲突き抜けてゆく観覧車 中川めぐ美
青き踏む二足歩行の有難さ 中嶋利夫
紀ノ川の水滔々と初茜 中嶋美惠子
花朧木場の名残の舟の道 成瀬千代子
10 喰積や語らず運ぶ一人箸 野田俊枝
みつ蜂の重さにゆれる花もあり 服部久美
行く春や隠れ蕾の二つ三つ 林 公子
あたたかや夫に似し声帰りたり 藤井三枝子
11 若水を汲みて今年の始まりぬ 古谷とく
のどけしや補聴器に聴く我が吐息 前田汐音
大文字山に賜はりたる初音 前田長徳
百歳が八萬人の菊日和 南 壽子
12 鳶の笛澄みて浦曲の初御空 森本潤子
思惟仏指の妖しさ春日ほの 矢野淑枝
空家なる隣家の庭も春めきぬ 山田佳郷
放流の水閃ける稚鮎かな 山中晴美
貴誌「鳥」の円滑なる運営と皆様のご健吟を願っております。
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