小澤主宰の句集『澤』を読む機会を戴いた。小澤さんについてはここで紹介するまでもないであろう。現在、氏は67歳になられるが、その第四句集で、40代半ばから約10年間の作品を入集した。2023年11月1日、角川文化振興財団発行。
一読して、好きな句を抽出させて戴いた。下記のように多数に及んだ。
007 湯を捨てて屋台しまひや梅の花
008 面箱におもてやすます春の暮
010 石飲んで鯉石吐きぬ夏深き
011 いま扠(さ)しし鰍かかげて木曾の子は
011 木の家の窓も木の枠きりぎりす
012 刈株の先出でてをる氷かな
014 牛小屋の二階ものおき桃の花
014 買はんかな山桜咲く島ひとつ
017 待つは楽しことに鰻の焼くるまで
018 鰻屋の銜へ団扇や串かへす
022 漁具小屋の屋根にサンダル犬交る
022 咲きのぼり朝顔青し屋根の上
023 羽黒山
ひとすぢの光りは最上鳥渡る
029 雪嶺まで信号五つすべて青
030 前山の悪相にして春隣
038 溝蕎麦や開けて土蔵の扉(と)の厚き
043 一支線二輛往復さくら咲く
047 笊のトマト四個を並べ一個載せぬ
048 をんなの子同士の相撲すぐ引き分け
049 さはやかに知多と渥美とむかひあふ
050 おしろい花杜国に妻のありやなし
051 かはぞこもかはらも石やあきのかぜ
059 眞鍋呉夫氏
黒のボルサリーノと杖と朧を来
068 みんみんよりつくつくほふしまさるころ
079 立ち上がらずよ草に這ひ草を引き
085 笊の内かならず笊や笊屋秋
089 冬日差し入り虚子庵やふた間のみ
093 せきれいのうれしくあゆむ氷の上
098 抜きえたる鰆の卵瑕瑾なし
099 こふのとり嘴打ちならす日永かな
100 水入れて薬鑵くもりぬ桃の花
101 薫風や頬杖ついてかんがへず
107 おでん屋の丸き木椅子に帰り来し
113 こしあぶら酢味噌の金(くがね)掛けにけり
116 かはほりの糞ぞ蚊の目のあまた入る
122 からまつ金(くがね)こなら銅(あかがね)散りつつも
131 茄子に水でたらめの唄うたひつつ
140 おほかぜのおほゆれざくら花散らず
141 石と土と木と紙の家さくら咲く
155 客をよろこび靴踏む犬やふきのたう
161 蛍籠寄り来る蛍ありにけり
165 扇風機羽透明や止まりても
170 みちのくのみなとのさくら咲きぬべし
178 墓石をぬぐふタオルや墓参
力まない自然体の句柄に安らぎを覚える。
有難う御座いました。
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