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山田千里句集『ミルク飲み人形』

 


 山田さんは須藤徹を継いだ俳誌「ぶるうまりん」の代表であられるから、ややシュールな難解句ばかりかと身構えたが、平明で抒情性・青春性豊かな句が多くあった。

 あとがきを読んで、ご母堂を介護しておられたこと、かつ、表題となった「ミルク飲み人形」はその御母堂のことであると知り、感動を戴いた。 


034 七月完全なるミルク飲み人形


 新書版スタイルの手軽な句集である。小生も最近、文庫本大の句集『SMALL ISSUE』を出したので、小型サイズを好む方がおられることを知り、うれしく思った。2022年6月25日、ぶるうまりん俳句会発行。


012 金木犀ひと呼吸して会いに行く

037 忘れたはずのチョコレート的抱擁

051 こわれた蛇口から涙

052 月白に文字を忘れたがらすのうさぎ

059 青葉風天目茶碗の小宇宙

060 夕焼けに私の時間が溶けていく

069 春キャベツ僕の気持ちは無添加です

077 春光の影曳く青木繁の「海の幸」

083 いつのまにか昼の蛍になっている

093 仏像は無言のままで冬に入る

103 曼殊沙華ひとふでがきの恋だった

107 心太するっと「好き」と言っており

111 時計が刻むスティックセロリの孤独

116 妹をやめて十年青葉闇

118 八月や上目遣いの老眼鏡

122 闇の夜に発光している金魚


 小生が共鳴した句を挙げさせて戴いた。051のような短い句があった。077には青木繁の名作『海の幸』が挿入されていた。難解な句を避けたので、平明な句ばかりとなったので、あえて解釈や鑑賞は不要であろう。小生は山田さんが男性か女性か知らなかった。答えは抒情性豊かな女性であった。

 次の句が、すんなりと私の胸に収まった。


083 いつのまにか昼の蛍になっている





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