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本杉純生句集『有心』



 

 著者本杉さんは故・木内彰志主宰の「海原」で俳句を始め、「琉」を経て「枻」の創刊同人となり、橋本榮治代表と俳句を楽しむ間柄となる。跋は橋本氏が懇切に書いておられる。

 神奈川県在住で、その第一句集の『有心(うしん)』である。2024年4月6日、株式会社コールサック社発行。


 橋本代表の十二句選は次の通り。


  いもうとを欲しと思ひぬ螢の夜

  裏木戸に父母の来てゐる祭かな

  鳥羽僧正忌まつたけ山に雨

  狐火を詠み狐火になられしよ

  雀荘の裏のポンポンダリアかな

  打つ心空となるまで胡麻を打つ

  脱稿の腐草螢となる夜かな

  よく伸びる小犬のリード水温む

  若鮎の影若鮎に追ひつけず

  秋の声アンモナイトの化石より

  蛇穴に入るみづうみの暮一気

  一つだに眠つてをらぬ数珠子の目


 一読して共感できる作品が多々あったので、抜き書きし、小生のこのブログに載せる次第であります。(*)印は橋本選と重なったもの。


036 田蛙の闇なまぐさき生家かな

038 いもうとを欲しと思ひぬ螢の夜(*)

039 裏木戸に父母の来てゐる祭かな(*)

049 通草挿す方の蕎麦屋を選びけり

078 福相を持て余しゐる種ふくべ

092 独楽投げて七十年の無策かな

108 熊手市一つ売れれば一つ出し

109 葉を落し欅大きくなりにけり

116 猪肉あります残雪六尺余

123 秋寂ぶや炎の土器を見に行かむ

131 庭隅に穴掘つてゐる厄日かな

132 乗用車乗り来て田水落しけり

137 安達太良の秀先を雁の名残かな

147 初時雨在五の墓の小振りなる

148 煤逃の渡つてしまふ戻り橋

155 狛犬の口中暗し春日差

167 新海苔二枚扇返しに焙りけり

172 さざなみの底まで青き鮎の川

184 少年の敬語正しき帰省かな

193 どの魚籠もまだ魚のゐず日脚伸ぶ


 特に好ましく思った二句を挙げておこう。


049 通草挿す方の蕎麦屋を選びけり

 旅吟の一句であろう。昼食に蕎麦屋を探した。二軒あったのだが、「通草」を店先に挿してある方を選んだ。「通草」に風情を感じ、このようなこころ配りをする店なら蕎麦も美昧いであろうと思ったのだ。ちょっとしたこころ配りの有無にこだわる作者の日常の態度が現れた一句である。このような行動パターンを、実は小生もとることがあり、共感を覚えた。


193 どの魚籠もまだ魚のゐず日脚伸ぶ

 なかなか釣れない。魚信もない。そもそもこの場所は良くないのでは? いや、自分の仕掛けが良くないか? それとも餌が悪いのか? いろいろ思い悩む。念のため、隣の釣り人の「魚籠」をそれとなく覗く。そして安心する。日は永い。腰を落ち着けてじっくりかまえるか・・・。


 楽しい句集を、多謝でした。

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