
林さんの第三句集(2025年1月15日、俳句アトラス発行)氏は1991年に角川春樹の「河」に入門。2021年、第一句集『ブリッジ』で俳人協会新人賞を受賞。2016年、「海光」を創刊し代表となっている。著作も多くある。
自選と思しき13句は次の通り。
万緑に怒気のみなぎり悪路王
寢ころぶとわたしも平ら秋の空
夜食とるラーメン分の本どかす
蜜柑山どすんと海が落ちてをり
おたまじやくし大きな脳で泳ぎけり
わだかまりのこりし墓を洗ひけり
風が磨く神の山々ななかまど
母の日や遠くまあるく土星の輪
江の島へ向かつて水を打つてをり
夏惜しみけり半日のレンタカー
火のついて紙の舞ひをり一遍忌
重力のバラ一輪のたわみかな
本能寺脱ぎし白靴より熱気
私が選んだ句は次の通り。
008 夏の海見せに来てゐる霊柩車
011 鎌倉の人の涼しき胡坐かな
016 天高し名門校の半ズボン
018 しづけさにくづす正座や鹿威
038 島風を指にまとはせ踊りけり
043 いそがしきことのうれしき親燕
054 湯の長き人を待ちをり梅ほつほつ
071 先導のうしろ歩きや大ねぶた
072 閼伽桶のどれも逆さま秋ひとり
088 指さしてすでに遠くへ夏燕
108 遠山に罪あるごとし威し銃
114 今どことたづねられたる初電話
132 八台のパソコンに桃届きけり
139 年の瀬やセコム貼りたる駐在所
140 下りてきて山に一礼松迎
私のイチオシは次の一句。
043 いそがしきことのうれしき親燕
私の好きな言葉にNicely Busy という言葉がある。英語圏の人との接触が多かったころ、「元気かい?」と言われて返す言葉がこれでした。親燕もまったくそんな状況を楽しんでいるに違いない。
Comments