同名の句画集の三冊目である(2021年10月10日、増田まさみさんの霧工房発行)。森田さんは島根県安来の人で、俳歴70年の方。島根県現代俳句協会会長や現代俳句協会理事などを歴任、『鬣TATEGAMI俳句賞』などを受けておられる。
該句画集は上質アート紙に120句ほどの俳句作品が並べられ、8点ほどの水彩・アクリル画が挿入されている。画趣は表紙絵と同様のやや抽象的な重量感のあるものである。
あとがきに「私は三十歳を少し過ぎたとき、生死の淵をさまよう事故に遭い両腕を失った」とある。その境涯を知り、苦難の様を想像し、氏の前向きな姿勢にいたく感動を戴いた。
春立ちぬ象にしかない鼻を振る
声絶ちし雲雀よ敦煌が見えたのか
砂丘いま揚羽の終の快楽かな
キリンの首に低き窓あれ手鞠花
おさな蛇まず潮鳴りに晒されぬ
一艘を加えず消さず鰯雲
仰臥せる胸の枯野に月のぼる
河べりを一個の冬となり歩く
十二月八日星空よりイマジン
森田さんは1926年のお生れなので、現在、95歳であられる。小生などはまだ80代であるが、俳句はただごと俳句指向に変わりつつある。しかし、森田さんの作品は、絵画もそうであるが、どれひとつ「ただごと」がない。豊かで重い背景を持った作品である。
この句画集は、小生にとって極めて刺激的でありました。有難う御座いました。
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