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永田満徳句集『肥後の城』




 

 永田さんは人吉市生まれ。「未来図」の鍵和田秞子主宰に師事、新人賞などを受けられ、俳人協会幹事、熊本県の俳句関係協会などでご活躍である。現在、藤田直子主宰の「秋麗」同人。文學の森、2021年9月27日発行、第二句集に当る。

 熊本と言えば、このところ地震や洪水の被害が顕著であった。熊本城も被害に遭った。あとがきにそのことが詳しく書かれている。当然、俳句にも現れている。


 自選15句は次の通り。


  阿蘇越ゆる春満月を迎へけり

  この町を支へし瓦礫冴返る

  さへづりのつぶだちてくる力石

  曲りても曲りても花肥後の城

  こんなにもおにぎり丸し春の地震

  本震のあとの空白夏つばめ

  骨といふ骨の響くや朱夏の地震

  水俣やただあをあをと初夏の海

  一夜にて全市水没梅雨激し

  大鯰口よりおうと浮かびけり

  半球はつかめぬかたち天道虫

  不知火や太古の舟の見えてきし

  天草のとろりと暮れぬ濁り酒

  大鷲の風を呼び込み飛びたてり

  巌一つ寒満月を繋ぎ止む


 小生の共感句は次の通り。


007 肩書の取れて初心の桜かな

026 愚痴ひとつなかりし母よ紫木蓮

027 城といひ花といひ皆闇を負ふ

033 良夜なり音を立てざる砂時計

044 ふるさとは橋の向かうや春の空

063 体感で当つる震度や夜半の夏

063 夏蒲団地震の伝はる背骨かな

081 夭折にも晩年のあり春の雪

089 蛇の滑り泳ぎとなりにけり

090 母校とはただ炎天のグラウンド

100 手袋の片方はづし道示す

101 全身に広がる寺の寒さかな

107 春望の山ふところの我が家かな

156 初鴉祖父の声して過りけり

162 出水川高さ誇りし橋流る

169 戦死者に敵味方なし日の盛


 地震に関する二句を鑑賞しよう。


063 体感で当つる震度や夜半の夏

063 夏蒲団地震の伝はる背骨かな

 

 いずれも身体を通して感じた地震に係わる句である。まさに実体験を詠んだ。それだけにリアルである。世の中には、視覚を通しての悲惨な災害句がたくさんあるが、この句のように身体感覚で詠んだ句は、読み手の私の身体にも伝わってくる。小生のイチオシの句である。

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