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池田澄子句集『月と書く』



 池田澄子さんは超有名な作家だから紹介するまでもない。前句集の第七句集『此処』の蛇笏賞は惜しかった。今回の句集『月に書く』は第八句集に当るのであろう。同じ朔出版、2023年6月7日発行。


 自選と思われる12句は次の通り。


  春寒き街を焼くとは人を焼く

  焼き付くさば消ゆる戦火や霾晦

  蝶よ川の向こうの蝶は邪魔ですか

  夕風や桜を見上げ合えば朋

  鷹化して鳩となるなば我は樹に

  葉桜の隙間隙間や光は愛

  健やかなれ我を朋とす夜の蜘蛛

  幸あれよ薔薇の葉裏に棲む虫も

  水澄むと書くとワタクシ澄んでしまう

  逢いたいと書いてはならぬ月と書く

  狭霧隠れの家々人々亡き人々

  風の便りと風聞草をこの世かな


 小生の好きな句は次の通り多数に及んだ。


008 はるかぜと声にだしたりして体

021 どの家も遺影は微笑ささめ雪

024 門灯を点けると暮れて白椿

026 ほゞ元気新茶のための湯を冷まし

030 カマキリの初めましてという立ち方

031 未亡人にも慣れて南瓜を焦がしたわ

040 見つめたり喉のぞいたり初鏡

048 春雨や錦糸卵に泡のあと

050 春一番顔を作っているところ

051 花の下こっちこっちと手のひらひら

052 この世から花の便りをどう出すか

052 極楽は歩いて行けるぺんぺん草

064 梅園を歩き桜の話など

067 毎朝毎夕腹すく幸を走り梅雨

071 木陰から日傘の人を手招きぬ

076 冷奴あまり冷たくなくなりぬ

077 めまといが居るらしあの手の振り方は

084 年取れば若いと言わる敗戦日

086 日の暮に少し間のある酔芙蓉

089 送り火消ゆ立つによいしょのしょが声に

091 水澄むや他はどうでもよいように

104 風をよく通した部屋をあたためる

130 通りすがりという佳い言葉月見草

137 いなつるびしんぱいされていて嬉し

153 さっきから呼ばわれごこち夕花野

156 なんとなく味醂少々文化の日

181 心よりと書いてしまって春深し


 自分が抜いた句をつくづく見直して、前句集『此処』との風合の違いを感じている。間違いかも知れないし、少し意味合いが違うのだが、芭蕉の軽みさえ感じた。もともと澄子さんには重暗(おもくれ)の感じはないのだが、『此処』では、沢山の楽しい句の他に、「老い」とか「命終」を感じさせる句を散見した。確かあとがきにも「句集を纏めることで自分を区切り、僅かの未来を、死別に怯えずに一度生きてみたい」と書いてあった。それが、『月に書く』で、は吹っ切れたような軽さ明るさで思いを書いておられる。羨ましい境地である。


091 水澄むや他はどうでもよいように

 小生イチオシの一句でした。有難う御座いました。

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