
026 風光る母校に山路めくところ
038 島どこも教会のあり鐘澄めり
046 湯気立てる人形焼や町小春
056 猫が好き俳句大好き風生忌
065 牡丹の今にも解けてしまひさう
067 紫陽花のだらだら坂や海展け
078 編笠の紅紐艶に風の盆
083 面取れば皆老いてゐし里神楽
090 伊達衿の色むらさきに初詣
111 教会の小さきオルガン火恋し
136 梅雨兆す紅殻壁の裏通り
138 リヤドロの少女ほつそりアイスティー
146 戸を少し開け秋風をみ仏に
163 誰とでもいつも仲良しチューリップ
164 鎌倉に抜け道多し白椿
165 太刀持ちの子役むずむず蝶の昼
166 横綱のごとき筍届きけり
185 咳するや節々痛み子規思ふ
186 東京は眠らざる街冬の月
ある句会で遠藤さんに会って、しっかりした句を作る方だと感じ入っていた。富安風生の娘さんだと知り、さもありなんと思った。私の作る句柄とは大違いで、如何にも俳句の本道を来た方の句であり、花鳥諷詠を地で行く人である。
遠藤さんは平成13年から「若葉」「岬」に投句を始め、「栃の芽」「雛」にもかかわっておられる。父富安風生に関する著作が多い。
序文は「若葉」の鈴木貞雄主宰。令和4年7月16日、東京四季出版発行。なお、「若葉」は風生が昭和3年に創刊し、昨年6月1100号を迎えている。
多くの海外詠や国内各地への旅吟がある。それらに、遠藤さんの生活の充実ぶりと豊かさが表れており、苦難や病涯句がほとんどない。俳句は美しく平明に楽しく詠むべきものであるという意思が分かる。その点、185,186は、私に特徴的に響いた。
安心して読める句集でした。多謝です。
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