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鈴木わかば句集『くちびる』


 

 鈴木わかばさんは、柏原眠雨主宰の「きたごち」などで俳句を学ばれた。その第一句集で、2024年12月1日、東京四季出版発行。序文は柏原さん。

 手に取って気に入った。手に馴染むソフトカバーの四六版で、1頁にゆったり2句。天地ぞろい。装幀は髙林昭太さん。130頁で200句ほどを厳選されたもの。私の句集『あまねし』と同じ雰囲気の句集であるのが嬉しい。


 自選八句は、わりに少なくて、これも好感がもてる。


 一畳の画仙紙に座し初硯

 梅東風や玉とかがやく塩むすび

 搔き廻す銀のマドラー利休の忌

 夏霧や惨禍の海へ向く墓標

 バーに置くだるまのボトル桜桃忌

 津波来し沖へ流灯のぼりゆく

 ジャズ祭に古着市立つ残暑かな

 浴槽に母のヘアピン寒に入る


 私の共感句は次の通り。


015 初日の出拝む津波のありし海

029 嫁がれて残されし父雛飾る

035 蝌蚪生るる帰宅困難地域かな

042 花筵出前のピザを真ん中に

044 図書館はお城の二階八重桜

046 もう誰も弾かぬピアノや目借時

068 処理水の金魚田に浮く値札かな

082 板前の高歯の音や鏡花の忌

096 秋蝶の麒麟の股をくぐりゆく

110 雪ばんば行き交ふ人も無き故郷

131 母の日や写真の裏に母の文字


 イチオシは、


131 母の日や写真の裏に母の文字


である。説明は要らない。平明で、情の溢れる句である。

 有難う御座いました。

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