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飯田マユミ句集『沈黙の函』




 飯田さんは平成15年に橋本榮治さんの俳句教室から俳句を始めた。父上が「馬酔木」におられた縁があったようだ。同人誌「琉」に入会、「枻」(雨宮きぬよ・橋本榮治代表)の創刊同人でもある。その第一句集で、2023年2月25日、コールサック社発行。

 序文は橋本さんが丁寧に書いている。それを読んではじめて背景が解って、感銘の度を深めた作品が多々あった。一読して、なかなかの才ある女流俳人とお見受けした。


 橋本榮治選12句は次の通り。


  初蝶や決断までの二十秒

  雨音の弱弱強弱ヒヤシンス

  ゆく春も亡き父母も夢のうち

  消え去りし蛇と脳裏に残る蛇

  蟬しぐれ空の余白を埋めきれず

  ビタミンの不足してゐる冷蔵庫

  帰国せよ流星の燃え尽きぬ間に

  原爆忌身体どこかつめたくて

  塗りつぶす下絵八月十五日

  寒いのは羽を失くしてしまつたせゐ

  セーターを着てやはらかき妻となる

  それよりもポインセチアが乾いてゐる


 小生の気に入りの句は、左の通り。


019 決心の紅を引きをり朝桜

023 影ひとつゆるがぬ真昼威銃

024 雁や掬へば消ゆる海の色

025 真つ先に入る故郷の掘炬燵

027 空よりも空の色して額の花

031 子の影にすこし遅れて白日傘

049 一枚の絵を観て帰る美術展

060 人形のやうな母ゐるクリスマス

068 もう一人の私が遊ぶ水中花

077 炎天へ踏み出すときの無口なる

081 平和とはクリスマスケーキ分かつこと

090 宮入のあとのしづけさ金魚玉

099 冬薔薇や小鳥のやうに笑ふ人

110 玻璃越しの母を見てゐる日永かな

127 人住めば家になる函冬いちご

140 冬日差す学生街の楽器店

145 まどろみの端に風鈴揺れてをり

145 白南風やどの部屋からも海見えて

157 春眠の母よ献花に埋もれて

160 重なつて眠る仔猫や花の昼

181 薄氷の下は底無しかも知れず


 小生の拘りの一句を鑑賞しよう。


049 一枚の絵を観て帰る美術展

 こんなことは、普通はしない。時間がなかったせいと考えては詰らない。知人から招待状を戴いて、義理でその方の作品だけを観て帰った……と考えても詰らない。家族の作品なのだろうか。そうとも考えたくない。お目当ての一作のみを目的に、時間をやりくりして、その美術展に行ったのだ。飯田さんにとって、待望の一作なのだろう。蛇足だが、小生にとっては、ピカソの「ゲルニカ」であろうか? 小生はそう考えたがっている。なんという拘りであろうか! それがいいのだ。

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