鴎座の主宰松田ひろむさんからアンソロジーを戴いた。創刊二十周年の事業として、記念祝賀会を考えたが、新型コロナのせいで、中止せざるを得なかった。そのかわり、合同句集を発行することとして、その名を『絆』とされたようだ。2022年8月1日、鴎座俳句会発行。
僭越ながら、各人20句の中から一句ずつを戴かせてもらい、お礼に替えさせて戴きます。失礼の段、どうぞご寛恕下さい。
009 トリアージ草蜉蝣は透くばかり 松田ひろむ
011 冬瓜の中の山河を煮てをりぬ 荒井 類
013 ロシア機の音に聞こゆる春の雷 有馬 歌子
015 秋晴や掴まり立ちの父一歩 安藤 利亮
017 目の癒えて月夜の海へ行くところ 池永 英子
019 追い越せぬ回転木馬天高し 石口 榮
021 雲の峰第三志望まで絵馬に 石口りんご
023 湯を注ぎ三分まてば文化の日 石黒 宏志
024 綿虫の遊ぶ墓前はあたたかく 磯部 薫子
027 失言はあらかた本音鶏頭花 岩崎 昌代
029 打ち水や風の匂いのふと変る 岩淵 純子
030 名を呼ばれ大根蒔く手休めけり 大島有加里
033 刀折れ矢尽きる如し枯蓮 大山 賢太
034 初蝶は阿修羅に会いにゆく途中 岡崎 久子
036 青春は額あじさいの青と白 金丸 菜斗
039 梅雨晴間ひとさし指で弾くピアノ 川崎 果連
041 ふらここやノートルダムは見えますか 菊池 志乃
043 青空に吸われ無音の敗戦日 岸 満理子
045 言問と聞けば木歩や川に夏 國井 梢
046 ボージョレヌーボー明日みなとの見える丘 倉本 岬
048 天空の城へ行く日も胡瓜もむ 呉羽 陽子
050 白マスク選べぬ日々の冬重い 黒沢 伸子
052 春塵や戦車の前に立つ市民 高矢 未來
055 乳首かゆしこぶしの花は天上に 髙良 和子
056 朝桜押したつもりのないボタン 小髙 沙羅
059 初日影ここは言霊幸う地 後藤よしみ
061 鎖骨から少女の脱皮夏休み 小林 則子
063 退屈は平和の証独活を食む 小林 謡
064 無信心葱のきらきら見ていれば 小林 湖
066 握力の強き右の手春を待つ 近藤 琴
069 鶯餅ちょっと背中を押してやる 齋藤 藍
070 足るを知る海苔と玉子とビバルディ 椎谷 もも
073 川沿いは裏窓ばかり蓼の花 白石みずき
074 ハニートラップ夏蝶の調査中 杉浦 一枝
076 漁火や宿の浴衣を短か目に 関 千惠子
078 新緑や柄のマスクの六地蔵 高橋 透水
081 丹沢に私雨や蕗の薹 田中 舞
083 丈短か考の残せし白絣 田中 隆一
084 アニョハセヨ鶯餅ははずせない 田辺 花
086 故里はあん餅雑煮二つずつ 中條 千枝
089 秋の声俄かに耳が良くなって 辻田ちか子
090 夏草や大差の負けも互角といふ 津田 文江
093 地虫鳴く街のどこかに秘密基地 百目鬼英明
095 左利きの右も自在や葱刻む 中村 ふみ
097 大空や二年延期の運動会 中山えみ子
098 秋深し業平塚を右回り 並木とき江
100 しゃぼん玉はじけて赤ちゃんのにおい 西谷とし子
103 聞きとれぬ音域あって合歓の花 信岡さすけ
105 小三治の使う櫓さばき秋扇 橋本寿江子
106 花冷や人さし指は撃つかたち 長谷川ヱミ
109 引き返すためにある橋春の雪 東谷 晴男
110 みなとゐてひとりと思ふ野分かな 日野 百草
113 木組みの家前を通れば木の香り 福島 芳子
114 初日の出部屋の奥まで光差す 古川 和美
117 そして八月幾万のパイプ椅子 古川 塔子
119 学校へ行けぬ子とゐる室の花 牧野 桂一
120 本籍はとうに東京お元日 増田 萌子
122 「アレックス電気灯けて」と蜜柑剥く 亦勝 文
125 お互ひの独り言聞く日向ぼこ 松本 旬子
126 広告のピザは半額海老飾る 宮 沢子
128 交番に刺股鎮座燕の巣 安原南海子
130 母の忌の冬満月の赤さかな 行成佳代子
132 のどけしや釣り竿二本網一つ 行成 知子
134 園児らの帽子ももいろ春北風 横山 妙子
137 原爆忌いたるところにコンセント 吉村 きら
139 草青むアラビアータとブラックと 渡邊すみれ
全部で1300句ほどであったろうか。興味ある作品が多く、選ぶのに苦労致しました。
「鷗座」の皆様のご健吟を期待いたしております。
Comments