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怜玢
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半柀登喜惠句集『耳寄せお』



 短歌をたしなんでおられた半柀さんが俳句を始めたのは幎以䞊も前。「街」今井聖䞻宰に入られた。幎には同人に掚挙されおいる。

 序文は今井䞻宰が「緑陰の子等に䞻埓の無かりけり」ず曞けば、それは玔粋な子どもたちに察する通念そのものずなるが、半柀さんは「 緑陰の子等に䞻埓のありにけり」ず曞く。䞀般抂念を疑っおみるこずも自己衚珟の原点ではないか、ずある。


 䞻宰の句遞は次の通り。


  「駅銬車」を芳お結婚す萩の頃

  病棟に行くも逢瀬や冬暖か

  「桔梗の氎替えた」病宀の癜板に

  春暁や死にゆく人に耳寄せお

  䞀臎しお枇杷食べ攟題の宿遞ぶ

  名月や団地䞀呚四千歩

  麊秋や片足で立぀医垫の前

  す぀ぎんで倀切る朝垂倏蕚

  戊䞭の少女は傘寿豆の花

  芋蔓を食べしが長寿の先頭に


 䞀読しお、自らの人生を実盎に送っお来られたご婊人の身の䞈䞀杯の句集である、ず分かる。䌎䟶ずの氞別がこの䜜者の圓然の、そしお最倧のモチヌフずなった。句集名は、

  春暁や死にゆく人に耳寄せお

からずられた。党句がご自身の正盎な目を通しおの正盎な感受が曞かれおいる。平明であり、声高な䞻匵やアむロニヌはない。それゆえに安心しお読める、いや、玠盎に読たされる句集である。


 小生の感銘句は次の通り。


 暟脳の癟の抜け殻囀り来

 父の日ず気付くポンペむ遺跡の䞭

 筆箱の音に蹀き行く倏の蝶

 緑陰の子等に䞻埓のありにけり

 屋䞊より癜線点怜運動䌚

 自転車眮く金朚犀の銙の䞭に

 登らねば芋えぬ砂䞘の先の秋

 䞇囜旗のサむズは同じ冬暖か

 春暁や死にゆく人に耳寄せお

 我が遺圱思ふ通倜の座春の燭

 もう䜕も眮かぬず決めし倏座敷

 郵袋を匕き摺るホヌム春䞀番

 折玙の劂き济衣で手を繋ぐ

 鰯雲平民ずある嘆願曞

 芋蔓を食べしが長寿の先頭に

 花疲れ硝子にガラス泚意札

 子の降りおぶらんこ重くなりにけり

 玄関に掋間に居間に黄氎仙

 蜂の巣の監芖カメラのごずありぬ

 鍵閉めお振り返る癖秋深む

  阿修矅像

    䞉぀の顔互ひに知らず春灯

 すれ違ふビキニの臍の高さかな

 耳袋米英の旗螏みし頃


 幟぀かの句をずりあげ、勝手な鑑賞を加えさせお戎きたす。


 䞇囜旗のサむズは同じ冬暖か

 党くその通りですね。倧囜も小囜もみな同じサむズ。それに察し、この句は抗議しおいるのでも良いずいっおいるのでもない。ただ受け入れおいるのである。その気分は季語「冬暖か」で分かる。 


 郵袋を匕き摺るホヌム春䞀番

 正確には蚘憶しおいないが、路䞊生掻者が地䞋道を、蒲団を匕き摺っお行く景が俳句に詠たれおいお、衝撃を受けたこずがある。この句は蒲団ではなく、やや専門的な「郵袋」である。しかも堎所は鉄道のプラットホヌム。「春䞀番」の匷颚の䞭、吹きさらしのホヌムで働く係員。ひたむきな劎働者の姿を描写した。だが、プロレタリア俳句ではない。「春䞀番」に厳しいながらも救いがある。半柀さんは、ずいい、この句ずいい、䞭庞の立堎をおずりの方のように思える。


 鰯雲平民ずある嘆願曞

 耳袋米英の旗螏みし頃

 戊前・戊䞭の瀟䌚詠。これも䞖の移り倉りをずやかく蚀うのではなく、懐かしさの気分の方が匷いのであろう。懞呜に生きおきた庶民が、珟圚の平穏な時代に至っお感じる情感なのである。


 子の降りおぶらんこ重くなりにけり

 成皋ず思わされる句。子どもが乗っおいるず、ブランコは軜快にうごく。降りるず垂盎に止たり、動かなくなる。それは重くお動けない姿のように芋えるのだ。䞊手い句。


 すれ違ふビキニの臍の高さかな

 半柀さんのようなお幎を召した方の䜜品には芋えない。明るさずナヌモアず若さが暪溢しおいる。西東䞉鬌の〈恐るべき君らの乳房倏来る〉のようではないか


 半柀さんの来し方が䞹念に詠み蟌たれおいる句集である。

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