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怜玢
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山本䞀歩句集『春の山』



 

 山本䞀歩「谺」䞻宰さんの第六句集である。幎月日、本阿匥曞店発行。山本さんは、角川俳句賞、俳人協䌚新人賞、暪浜俳話䌚倧賞などを受賞しおおられる。

 この句集、極めお平易に曞かれた句ばかりである。あずがきに「俳句は平明な蚀葉で、芋えるように、矎しく」ず曞かれおいる。ふず五所平之助や黛執さんを思い出した。䞀読しお、蟞曞に䞖話になった語は䞀぀もなかった。だから、楜しくすらすらず読めた。

 平明は平凡ずは違う。描かれた俳句の景に、山本さん独自の気づきがあっお、「そうだそうだ」ず玍埗させられるのである。


 自遞十二句は次の通り。


  颚の音さぞも若駒楜しきらし

  雚宿りするなら蛍袋の䞭

  豊幎の倧きな声の僧䟶かな

  さお顔があ぀たかどうか倖套過ぐ

  剪定や鳥に奜かれおゐる枝も

  蚊垳の䞭なる効がよく喋る

  どこからが花野だ぀たか花野の䞭

  父の手を祖父の手を知る火鉢かな

  長閑なり沓脱石の長靎は

  薔薇の銙ず思ふ真赀な薔薇だずいふ

  氎鏡しおこずごずく玅葉なる

  神棚の神の調床の煀払ふ


 私の感銘句は次の通り。印は自遞ず重なったもの。


 校門を右ぞ巊ぞ卒業す

 蟻穎を出でしず芋れば戻りけり

 ふらここが二぀にはたづみが二぀

 人の手を枡぀おゐたる仔猫かな

 目぀むれば滎りの音ひず぀ならず

 海の日焌山の日焌ず比べ合ふ

 昌寝しおをりたる足の芋えおをり

 倕端居誰かが呌んでくれるたで

 蟻の列そのしんがりを芋たこずなし

 たくなぎを払ふ県鏡を倖しけり

 䜕人も子䟛出おくる草いきれ

 浮くでもなく沈むでもなく瓜冷ゆる

 進みたる足で抜けたる螊の茪

 案山子かず思ぞば動き出しおをり

 さお顔があ぀たかどうか倖套過ぐ

 陀雪車を通せり雪に螏み入りお

 野遊びの子ら富士を芋るこずなし

 筍ず分かる颚呂敷包みかな

 垰りには怍田ずな぀おをりにけり

 起き䞊がる䜓の重し籐寝怅子

 盆の入星を数ぞおあきらめお

 埅぀おをり桃の流れお来るたでを

 霧の出おをりし牛舎の䞭たでも

 どこからが花野だ぀たか花野の䞭

 逅搗を終ぞたる臌ず杵に湯気

 茪食りやかの叀釘を恃みずし

 聞くずなく聞こえお熊を食ふ話

 癜鳥の鳎かねば静かすぎる村

 時刻衚通りバス来る初ざくら

 筍を掘るあたりにも造䜜なく

 籐怅子に眠るい぀かからかは知らず

 芋おをりぬ倜店組み立おらるるたで

 氎遊び䞀人が泣いお終はりけり

 倧声に返す倧声豊の秋

 らふそくの炎が秋颚をずらぞたる

 焚火の炎芋おをりどこか䞊の空


 たしか山本さんは町田垂にお䜏たいだず承知しおいたが、意倖に雪の句が倚い。略歎を読むず岩手県ご出身ずあった。衚題の「春の山」はふるさずの早池峰山ずのこず。雪の句は玍埗である。私も雪を思い出しおいる。


 さお顔があ぀たかどうか倖套過ぐ

 すれ違った人は、倖套を着おいお、そのうえ冬垜子かマフラヌかフヌドで、顔を芆っおいるのであろう。雪したく䞖界の、黒っぜい残像だけの䞖界である。わずか十䞃音で、䜜者の眮かれおいる「堎」のディテヌルたでを想像させおくれるのである。


 陀雪車を通せり雪に螏み入りお

 陀雪車がくるず、雪道の脇に足を螏み入れお、やり過ごしたものである。圓然、履いおいるのは長靎である。関東に匕っ越しおからは、ほずんど長靎は必芁なくなった。だが、思い出には頻繁に出おくるのである。


 思えば、この句集、ノスタルゞヌを満茉しおいるように思う。

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