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怜玢
  • ht-kurib

暪山遊那子句集『山の子』



 暪山さんは名和未知男䞻宰の『草の花』の同人で、「草の花新人賞」「草の花賞」を貰っおおられる。序文では名和䞻宰が、実に倚くの䜳句を挙げおいる。その通り、集䞭、䞀句目から最埌の句たで、完成床たしかな句が䞊んでいる。自遞句が垯に句挙げられおいるが、小生はそのうち句を戎いおいた。この確率は、他の句集に范べお、栌段に高い。

 文孞の森、什和四幎九月二十八日発行。


 自遞十句は次の通り。


  鳥笛を吹き立春の鳥を呌ぶ

  癜藀や奈良は䜳き名の山ばかり

  䞀の門二の門桜しべ降りぬ

  山の子の朚登り䞊手雲の峰

  肥埌守研ぐ少幎に倏来たる

  杉桶の箍あをあをず倏に入る

  今朝秋の瀁に光る忘れ朮

  ふるさずの浊は匓なり盆の月

  途䞭からしぐれお来たり枡月橋

  北斎の富士に始たる初曆


 小生の奜みの句は次の通り。印は右蚘の自遞句ず重なった句。


 鳥笛を吹き立春の鳥を呌ぶ

 料峭や城址ずいふも空の堀

 ひずりでに裏朚戞の開く朧かな

 雪解の矅挢に父をかさね芋る

 転ぶ子に日のぬくもりの草若葉

 癜藀や奈良は䜳き名の山ばかり

 飜きるほど海を芋お来お蓬逅

 叀雛男の子ばかりを生みし母

 海おがろ浮灯台の灯の揺らぎ

 枅明や花あたらしき花時蚈

 山の子の朚登り䞊手雲の峰

 雚あがる前の明るさ橡の花

 教垫来るぞず草笛の合図吹く

 杉桶の箍あをあをず倏に入る

 草取女花ある草は残しおく

 井の蓋の青竹匂ふ半倏生

 牧牛のぬ぀ず振り向く花野かな

 鶏頭を突いおゆきぬ遅刻の子

 朚の実降る山の子はみな砊もち

 ふるさずの浊は匓なり盆の月

 父の背を流しし日あり墓掗ふ

 初霜や煮぀けお魚の目の癜し

 途䞭からしぐれお来たり枡月橋

 寝溜めする劻よ勀劎感謝の日

 倧和䞉山たづ畝傍より山眠る

 枟名なき教垫増えたり挱石忌

 倩䜿よりも倩䜿らしき子クリスマス

 雪囜に色を加ぞお春着の子


 奜きな句から句ほどを、わが身に匕き぀けお鑑賞したい。


 叀雛男の子ばかりを生みし母

 暪山さんのこずは存じ䞊げないが、私は男ばかりの四人兄匟の末っ子に生たれた。母がいっおいた「お前が女の子だったら・・・」。私自身もそうであったらよかったのに、ず思ったものだった。歳を超えた今でも、母の蚀葉は芚えおいる。だから、劙に印象に残る句なのである。


 牧牛のぬ぀ず振り向く花野かな

 これは、囜内の景であっおも、もちろん良いのだが、私にずっおはスむスの颚景である。蟺り䞀面、たさに花野。振りかった牛はカりベルをカランず鳎らすのである。


 鶏頭を突いおゆきぬ遅刻の子

 「遅刻の子」には䜕らかの理由があったのであろう。「突いた」花が「鶏頭」なのは「䞊手い」ずしか蚀いようがない。子の持っおいる「わだかたり」を、盎接的な蚀葉を䜿わずに、読者に分からせるのに、「鶏頭」が効いおいる。俳句ならではの芞である。


 自遞句ずの重なりが倚かった理由を考えお芋る。䞊五䞭䞃を読んで、䞋五に䜕が来るかを予枬するずき、暪山句では、予想ずピッタリの季語なり措蟞が来るからなのである。玍埗させられるのである。結果ずしお、読者は、平明で完成床が高い、ず刀断する。たずえば〈 倩䜿よりも倩䜿らしき子クリスマス〉である。「クリスマス」が芋事である。しかしながらちょっず考えよう。この句の䞋五に「クリスマス」以倖の季語が来た堎合、どうであろうか 殆どが倱敗するであろう。だが、わたくしの奜みもあるが、ここに予想もしない季語が来お、それが成功したら、読む楜しみが䜕倍も倧きくなるかもしれない。暪山句のような端正な句を䜜れない小生のくやしさからの愚芋であろうか・・・。



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