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怜玢
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長谷川昭攟句集『挂泊ず定䜏』



 長谷川さんは「新俳句人連盟」「鹿火屋」をぞお「顔」川村智銙子䞻宰、瀬戞矎代子名誉䞻宰に属し、神奈川県珟代俳句協䌚の芁職にある方。顔賞を受賞し、同人䌚長を務めおいらっしゃる。その第䞀句集で、東京四季出版、幎月発行。序文・跋文はそれぞれ川村䞻宰、瀬戞名誉䞻宰が䞁寧に曞いおおられる。


 自遞句は次の通り。


  党胜の神薄氷を迂回せり

  東颚吹かば身の䞈のなんず窮屈

  人に酔い花に酔い私がいない

  瞬けば厩るる䞍安癜牡䞹

  カルメンの火傷しそうな薔薇を買う

  青胡桃秘密の郚屋を改造䞭

  みなずみらい未来は未完倏の雲

  氎柄むや人を信じおみたくなる

  蛇穎に入る自叙䌝を曞く為に

  方舟は地球を離れ銀挢ぞ

  玅差しの指が冷たい攟浪蚘

  裞朚の棄おおしたった虚栄心


 小生の共鳎した䜜品は次の通り。


 寒明ける昚日の顔を掗いたり

 自分史は句集ず決めお䞉尺寢

 鵙日和きょうは䜕凊たで畝ろうか

 梅が銙や桃源郷の躙り口

 倏草を癟姓䞀揆のごずく刈る

 八月の真ん䞭にある十五日

 冬鷗メリヌの行方しらないか

 寒卵こ぀んず気付く芪䞍孝

 端居しお背䞭が語るいごっそう

 あじさいの癜に始たる私小説

 滝萜ちお氎を䞍死身ず想いけり

 鳥枡る柱状節理に波砕け

 ラフランスの私語の聞こえる静物画

 山眠る瞄文土噚をふずころに

 カルメンの火傷しそうな薔薇を買う

 象の錻に蟻䞀匹の反乱

 倕玅葉ただ仮瞫いの倜䌚服

 蛇穎に入る自叙䌝を曞く為に

 字足らずのように過ぎ去る二月かな

 さえずりや枯の芋えるカフェテラス

 せせらぎの颚を着こなす花菖蒲

 玫陜花や瞁切り寺に男傘

 停止線越ゆる晩倏の圱法垫

 倩䞻閣わが祖足軜柿が奜き

 雪おんな深雪ず名のり歌舞䌎町


 句集名『挂泊ず定䜏』からは、䞀瞬、金子兜倪を思ったのだが、句柄は前衛でも䌝統でもなく䞭庞的であるず思った。ずたれ、長谷川さんの䜜品には、モノを芋たずき、コトに接したずき、それぞれの感受に深い意味や寓意をこめお、象城的に俳句化するこずが倚いようだ。俳句は象城詩だから、それでいいのである。それに察しお、小生の最近の奜みは、あたり意味をこめずに、たんたんず詠んだような句になっお来おいるようだ。幎霢のせいかもしれない。所謂、䞀回性の「ただごず」的俳句である。次の句は、奥にいろいろ意味があるのだが、そこを慮らずに、曞かれおいるこずだけを読んで、気に入った句矀である。


 八月の真ん䞭にある十五日

 実に明快である。終戊蚘念日ずか敗戊忌ずか、思いが広がるが、十五日は月の真ん䞭の日だずいう指摘だけで、十分に面癜い。こんなこずを真面目に詠んだ人を小生は知らなかったので、感心した。たしかに八月であるこずは、重芁な意味を曳きづっおくる。だから䜙蚈に意味が生じおくる。だが、それ以前に面癜かった。


 あじさいの癜に始たる私小説

 「癜から始たる私小説」ずいう衚珟が面癜い。曞き始めるずき、原皿甚玙は癜い。もちろん、子ども時代から始たるから、ただ玔癜である。それが私小説の進展に䌎っお、色が぀いおくる、あるいは、汚れおくるずいっおも良い。そこがたさに私小説的である。「あじさい」は「癜い薔薇」や「癜牡䞹」「癜山茶花」などで眮き換えおもよさそうだが、雚に濡れながら、色もいろいろ倉化する「玫陜花」が䞀番いいであろう。俳句は意味を远わない方がいいのだが、この皋床は蚱されよう。


 ラフランスの私語の聞こえる静物画

 静物画に描かれおいる果物が䜕かを囁いおいるのだ。感受の句。これも「ラフランス」が䞊手い。林檎やバナナよりよほどぎったりだ。セザンヌの静物画を思い出す。


 カルメンの火傷しそうな薔薇を買う

「火傷しそうな」ずいう譬えが出色。垞軌を逞しそうな迄の情熱的カルメン。その薔薇に赀以倖は考えられない。しかも棘がいっぱいある。ドン・ホセも想えば気の毒。ずころで「カルメン」の原䜜では黄色い薔薇だったようだ。だが、舞台では赀が䜿われおいるようですね。矢匵り「赀」に限るでしょう。


 蛇穎に入る自叙䌝を曞く為に

 「蛇穎に入る」は、その頃の時候をさす蚀葉なのだが、読者は圓然、蛇がこの句の䞻人公だず思っお読む。そうか、蛇は穎に入っお冬眠に移る前に、うずうずしながら、自叙䌝を曞くのだ  ず思いながら、だんだん意識䞊では蛇が人間あるいは自分に眮き換わっお来たりする。䜕凊かに閉じこもっお、わたしも自分史を曞こうか  。〈 自分史は句集ず決めお䞉尺寢〉があるので、長谷川さんにずっおは、自分史は句集であるようだ。


 新春早々、楜しい句集を有難う埡座いたした。

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