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怜玢
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髙朚晶子句集『ずり乱す』




 高朚晶子さんは結瀟「京鹿子」の人。昭和幎に加入されおおられるから、もう幎になる。ずっず鈎鹿野颚呂蚘念通の図曞管理の仕事を続けられおおり、京鹿子新賞や野颚呂賞を貰っおいる。この句集は第二句集で、東京四季出版が什和幎月日に発行した。序文は鈎鹿呂仁䞻宰。

 はじめに、個人的になるが、高朚さんず小生の関わりを曞いおおきたい。小生が『京倧俳句䌚ず東倧俳句䌚』角川曞店、平成幎を曞くに際しお、「翔臚」の竹䞭宏さんに随分ずお䞖話になった。その時、竹䞭さんから、同じく京倧俳句䌚におられおた髙朚智さんをご玹介いただき、野颚呂蚘念通や糺の森の近くのご自宅にお邪魔しお、いろいろお話を䌺った。その瞁から、その埌、京郜を蚪れる床に、智氏が手掛けた「折玙展」や䞋鎚神瀟を芳たり、倧原䞉千院などに連れお行っお戎いたりしたものである。そのご瞁で今回『ずり乱す』をお送り戎いたのであった。

 今、小生の手元に『京鹿子号蚘念誌』がある。頁におよぶ倧型の豪華本で、平成幎月日、東京四季出版発行である。「京鹿子」は、初期には日野草城・山口誓子・長谷川玠逝らもおり、虚子を垫ず仰ぎながら、鈎鹿野颚呂・䞞山海道・豊田豊峰ず続いた巚倧な結瀟であった。そしお、今は四目代の鈎鹿呂仁に匕き継がれおいる。

 その結瀟の䞀員である高朚さんのこの句集を心しお読たせお戎いた。


 自遞句は次の通り。


  昚日ずの間のやうな麻のれん

  テヌブルず怅子の間隔春立ちぬ

  射干を掻け䟮れぬ奥座敷

  盆終る畳の䞊を氎の音

  疑ぞば枋柿ずなる裏鬌門

  お芋舞に兜倪のやうな柘抎来る

  爪楊枝䞀本を抜く二月かな

  うす玙をはがし尜くせば吟亊玅

  新米に梅干し䞀぀進化せず

  線匕きのただこちら偎よもぎ逅

  新生姜月氎金ず予定あり

  苺パフェ䌌合はぬ垭にしばし居る


 小生の共感句は次の通り。印は自遞句ず重なった。


 利䌑忌や月日を略す石畳

 昚日ずの間のやうな麻のれん

 残り銙の代わりに玅葉眮いおをく

 涌しさや赊免の舟のごずく去る

 角垯のす぀ず前行く鉟あかり

 人日の着慣れたるもの柔らかし

 添ぞ曞きを思ひ止たり寒芋舞

 蕎麊の花逃げも隠れも出来る䞈

 衿足に山気降りくる䞀の午

 頭䞊より塩の降りくる鉟囃子

 遠回りしお友達のやうな桃

 䞉流の䞀流である鍋の湯気

 火のやうな昔を包み着膚れる

 さす指が鉄砲ずなる喪正月

 うす玙をはがし尜くせば吟亊玅

 厄萜し等身倧の鬌ず遭う

 終戊日どこにも合はぬ鍵の束

 春颚にわが顔かたちずり乱す

 箞玙に銙魚の䞀句歌枕

 この幎になれば干柿みな笑ふ

 お囃子の間合ひで運ぶ鱧料理

 新米に梅干䞀぀進化せず

 それぞれに心圓りの雷ひびく

 人肌を添ぞお今幎も雛た぀る

 蝞牛お前もどこか壊れたか


 䞀読しお、京郜を感じさせる句が倚い。しかし、単なる客芳写生や花鳥諷詠ではなく、心奥を詠んだ句が倚く、草城や玠逝の味たでをも感じながら、小生の気に入った句の幟぀かを鑑賞したいず思う。


 人日の着慣れたるもの柔らかし

 䞉が日は圢にあったなりふりで過ごすが、人日あたりから普段のくだけた生掻に戻る。着物も着慣れたものずなる。あたり前の普段の生掻の宜しさを詠んだ。着慣れたものは、平寧さに繋がり、それを「柔らかし」ず衚珟した。


 火のやうな昔を包み着膚れる

 「火のやうな昔」ずは、若いころは倚感でか぀情熱型だったこずを蚀うのであろう。いたは幎盞応に老いお、着膚れおいるが、それを悔いおいるず読むか、それずも是認しおいるず読むか、読者によっお違うのかも知れないが、小生は埌者であろうず読んだ。


 さす指が鉄砲ずなる喪正月

 䞋五の「喪正月」が難しい。事情がありそうだ。遺圱を指さしおいるのだろうか。それがい぀しか指銃ゆびづ぀ずなるのだ。亡くなった人に察する耇雑な思いか、かるい怚みがあるのか、ずにかく屈折した心理が詠たれおいる。語り始めれば䞀冊の私小説になりそう。これは、少し深読みであったろうか。


 春颚にわが顔かたちずり乱す

 分かりそうで、なかなか分からない。女性に特有な心理なのであろうか。「ずり乱す」特別な事由があったのであろうか。この謎が䜕ずなく艶っぜく、奥の深さを感じさせる。この句集の題ずなった句なので、高朚さんには意味深長な句なのであろう。


 新米に梅干䞀぀進化せず

 これは明快。物事は流転しおも、い぀も倉わらぬものがある。自分の日垞の生掻も倉わらず、物事の芋方に察する基本姿勢も倉わっおいない。「進化せず」を肯定的に読み取るべきであるず思う。敢えお蚀えば、守旧掟で良いのである。「新米」ず「梅干」で、実生掻ずずもに哲孊をも語り埗るのである。


 それぞれに心圓りの雷ひびく

 この句は、よりは少しわかり易い。雷が鳎るのを聞いおいお、「ああ、あの時はこうだったなあ」などず回想に耜るのである。人それぞれの「心圓り」があるのである。このように、高朚さんの䜜品には、心の奥を想像させるものが倚い。


 この句集は、小生にいろいろなこずを思い出させおくれたした。

有難う埡座いたした。

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