俳句雑誌ノイ「NОI」創刊
- ht-kurib
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神野紗希さんと野口る理さんが共同代表となり、俳句雑誌「ノイ」を創刊された。おめでとうございます。祝意を籠めて、遥野集と野惟集の作品から好きな句を抜き書きして、小生のブログにアップいたしました。ご笑覧ください。ただし、四句以上掲載されている作品から、好きな句が沢山あっても一句だけにさせて戴きました。三句以下の方からは、厳選で適当数に限らせて戴きました。失礼の段、どうぞご寛恕下さい。
遥野集
春やぱきんとうさぎ生まれし飴細工 木田 智美
額こそ汝が日記なれ風花来 永山 智郎
汚れつつ輝く雪だったかたまり 友定 洸太
家中の椅子をあつめてすき焼す 弓木 あき
甘くなるあくびのなみだ木の芽時 田中まぎぬ
百両編成トレイン春星の砂漠 藤 雪陽
承認欲求とピアニッシモの囀と 植 朋子
泣き真似のつもりが泣いて菜の花は 山口 優夢
野惟集
ひまわりの種を兵士よポケットに いずみ令香
柳絮とぶ日のふくよかに象舎跡 藤田かをる
いちめんのなのはなうちうせんのあな 山下 恍
健康で文化的な最低限度の緑の夜 斉藤よひら
逆光の春の機体のくぢらめく 丹下 京子
もう一度詩を書くための冬菫 青井えのこ
鰭が手と化して春夜の海の底 陰山 恵
はだら雪いつかは離す手なれども 竹内 桂翠
会話へと入る接木のイメージで 中村希奈子
時計徐々に時刻を離れ春の月 佐藤 五日
蕎麦湯桶あちこち足らぬ入彼岸 北野 小町
檸檬転がしてモラトリアムに入る 三浦にやじろう
紫荊とてもきれいな夜である 里 山子
雨の夜の鮎は川藻の濃き匂い 渡戸 道子
真っ新な旅真っ新な春ショール 野村 起葉
ヒマラヤの塩遥々とセロリ噛む 岩浪 青児
風光るカーテン裏に猫の道 平林 檸檬
鹿せんべい無くなれば掌を見せにけり 堀内 晴斗
末っ子になりたしいぬふぐりを摘む 榎本 佳歩
春の雪ビニール入りの新聞紙 春菜
ダンボール捨ててミモザの町の人となる 佐藤 知春
春の雨とくべつな誰かが来ない 深谷 健
俺様と言いそうな鮫過ぎりけり 広瀬 康
薄氷に花のやうなる皺のあり 斎 健太
神々はゐる悉く着ぶくれて 北口 直
鳥雲に入る二段階認証で 檜野美果子
スウェットで行けるコンビニ昼霞 宮下ぼしゅん
風光る校舎の裏の線路跡 千田 洋平
空よりも蒼の深くて春の海 上岡 未奈
蜆蝶ほどの弱音を吐いてをり 横山 航路
政治家をやつてゐさうないぼむしり 葉 ざくら
はじめてのピアス余寒の福耳へ 後藤麻衣子
手羽揚る春宵を飛ぶかたちして 杏乃みずな
春光をじぐざぐ進む三輪車 星月彩也華
前号のクイズのこたえ春炬燵 堀あいだほ
街に溶け街となりけり初雪は 砂狐
速達の面接通知あめんぼう 幸田 梓弓
ミサイルの立てかけてある日向ぼこ 磐田 小
恋人を辞め永日の鳩となる 嶋村 らび
ストレス性めまい鉄砲百合たわわ 西村 柚紀
さへづりや水のふるへてゐるこころ 櫻 栄二
抽斗の桜貝 飲まない薬 武智しのぶ
黄色い線の外側を花散りしきる 高尾 里甫
初雪や故郷よりも東京(ここ)が好き 野々柚子子
あたたかや餃子に背鰭あればより 飯本 真矢
不等号の向きくるりんと春の風 千尋
シナモンをさらり料峭のキリマン 澄珈
白龍の息づき淡き霜夜かな 増原 まみ
初ざくら端から脆き粉ざたう 山上 秋葵
花は葉に胸板厚き俥引き 戸田山勝彦
鳥籠の中は聖域黄砂降る 奈良 香里
no.1と記すノートや春深む 柚木みゆき
春眠やシーラカンスの鰭ゆらり 西川 栄子
ガザといふこの初声の届かぬ地 北柳あぶみ
遠くからわたしの声がする朧 タケオ
相槌にかへす相槌あたたかし 髙田 祥聖
暖かや砂のトンネル開通す 山縣 文
春愁や珈琲豆の手挽き音 よしざね弓
初桜吾子の高座は平林 遊鯉
春夕焼ふわりと発す私のわ 阿部 蓮南
のりしろののりを春風撫でており コンフィ
狛犬の石の眼遠き貝櫓 松本こういち
ひらがなで降つてきさうな牡丹雪 梶浦 道成
風光る君は口の端くいと上げ 原 水仙
まんさくや隙間だらけの薬箱 板柿せっか
この絵本にはしんじつの鳥の恋 星野いのり
待春や自分の映るあなたの目 網野 月を
今週はチューリップ置く文机 山本 あを
きょうはあめきのうはゆきでようちえん 春野れいん
整備士の一礼機窓に風光る 乃咲カヌレ
ハラールの店に溢るる桜草 鈴木 麗門
油井の灯ゆらぐ地球よ散椿 本城 清
黄水仙逆流はせぬ砂時計 梅澤 春雄
鳥居くぐるに風船少し下ぐ 岡 雲平
捨て野菜につんと伸びる芽春の雨 木の実ラウラ
水軍の炮烙焼きぞ桜鯛 松本 靖子
キューピーのくせ毛のやうな春の雲 石田 裕美
駅ビルが好きで売り娘の桜餅 内田 凸歩
神さまがいるとかいないとか蝶々 東田 早宵
昼寝して臍の冷たき窪みかな 関根 杏華
痛いほど奇麗な銀杏散りにけり 金光 舞
幸せと決めたんぽぽへ跪く 奥野こみち
病室の小さき箪笥や風信子 朝月沙都子
手のひらで洗ふ子の脚鳥雲に 此村 奈積
このままでいいわけがないいぬふぐり 福田 春乃
メニューに目移り蜜蜂のホバリング 池田 純子
日だまりの犬のイビキや春きざす たかはしゆう
その蓋のほどよき固さ海苔香る 企 鵝
車椅子に免許証のなし桜ひら あや子
針山に包む髪の毛春炬燵 野島 正則
朧夜やルンバ突然動き出し 佐々木由紀子
透明な器に替えて春を待つ 原田 童子
はるかより人声のして花月夜 武子
春風や猪木のガウン羽織る母 世良 日守
春の日や蜂蜜垂らすこの角度 吉川 拓真
花弁餅白き日記に墨を挿れ 唐草もみじ
祖母の居たまま置かれたる紙風船 坂本 佳樹
進路調査第一希望石鹸玉 玉野 文
奥山は雪解の音のありしのみ 福田 匠翔
つぶあんもこしあんも買ふ彼岸餅 目黒 琴音
皆勤の賞状小さき卒業式 酒旗
犬は犬を犬だと思ふはるのゆく 谷川 窓
オオゴマダラ羽やぶれても生きてゆく 神野 純
葬送の歌はラの音鳥帰る 音羽 凛
マーラー5番震災当夜のコンサート みちる
ちゃぶ台にペルーのクロス木の芽和 河野 浩
「エリーゼのために」柊咲き初むる 山本こうし
野々草々から
薄氷ひかりは朝をあやまたず 神野 紗希
祈る手を蕾と思ひ卒園す 野口 る理
くれぐれも失礼の段、お許し下さい。
貴誌のご発展を願っております。