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栗林浩句集『SMALL ISSUE』




 

 今年の六月、第二句集を上梓致しました(本阿弥書店、2022年6月15日発行)。

編年体でなく、文庫本のサイズにするなど、すこし拘りのある句集でした。あとがきに、次のように書きました。


あとがき

 私の第二句集です。二〇一九年から三年間の作品を、第一句集『うさぎの話』と同数の二九五句に絞りました。短期間での句集ですので編年体ではなく、モチーフごとに並べ、読みに資するような小文をいれました。しかし、本来、俳句作品は自由に読んで戴くのが筋ですので、どうぞ自由にお読み戴きたく思います。

 句集名は〈着膨れて立売の手に「BIG ISSUE」〉に因みましたが、「BIG」よりも「SMALL」が相応しいと考え、そう致しました。したがって句集のサイズも小さく致しました。

 結社は澤好摩代表の「円錐」、高野ムツオ主宰の「小熊座」、今井聖主宰の「街」、塩野谷仁前代表の「遊牧」に所属し、さらに他の結社や超結社の句会にもお許しを得てお邪魔させて戴き、いろいろな俳句を勉強させて戴きました。傾向の違いはあっても、良い句は良い評価が得られることを学びました。私の俳句は多くの主宰・代表・俳友の影響を受けております。しかし、どれもが私の作品であります。僅かでもお眼鏡にかなうものがあれば幸いであります。


 自選という言葉は使わずに「記憶の十二句」として、次の句を掲げました。


 野遊びの子らに達磨はすぐ転ぶ

 洟垂れのみんな離れてチューリップ

 梅の実の太るはやさの怖ろしき 

 ジプシーの子沢山屋台の青バナナ 

 ががんぼはとまつてはじめてががんぼ

 今年また柱の増ゆる原爆忌

 障子貼る糊が余つてしまひけり

 わたくしを捜す放送秋の暮  

 北駅の朝顔青しパリ青し 

 東京は花なき剣山銀杏散る 

 数へ日の街に熊出て撃たれけり

 着膨れて立売の手に「BIG ISSUE」


 発行からこの八月下旬まで、皆様から沢山のコメントを戴きました。それらを取りまとめ、比較的高頻度で皆様がお目にとめて下さった作品を、二十句に限ってご報告し、戴いたコメントへのお礼と致したく思います。先に掲げました記憶の十二句とかなり違っておりますが、重なっている句もあり、嬉しい限りであります。

 反省点は、やはり海外詠は難しい、という事実でした。生活者の目線で詠むように心がけていたのですが・・・。


 皆様がお目に止めて下さった作品を、一位から二十位まで、高点順にお示し致します。


  わたくしを捜す放送秋の暮(*)  

  ゲルニカにただ一輪の帰り花

  樺忌やガラスの靴の割るる音

  水が水に優しくなりて水ぬくし

  ががんぼはとまつてはじめてががんぼ(*)

  着膨れて立売の手に「BIG ISSUE」(*)

  今年また柱の増ゆる原爆忌(*)

  そらまめやうねびみみなしうすみどり

  そののちのマリアを知らずさくら貝

  数へ日の街に熊出て撃たれけり(*)

  国後見えて国境見えず鳥渡る

  花野出るときの寂しさ捺印は

  たましひはしろはなねむのひとよはな

  梅の香やふだんは天動説である

  犬に服植木に電気クリスマス

  竜飛崎雪は下から降るといふ

  有馬先生ホットワインが冷めますよ

  唖蟬も鳴きたからうに摩文仁丘

  こころにも水渡らせて螢待つ

  たましひが靴そろへたる花の下


(*)印は、小生の「記憶の十二句」と重なった作品であります。少ないというべきか、妥当だと考えるべきか、迷いますが、たいへん勉強になりました。

 最初の二句〈わたくしを〉と〈ゲルニカに〉がダントツでした。それ以下は、僅差が続きました。ご覧いただければ、幸いであります。


 今回、実に多くの方々からお便りを戴きました。ここに厚くお礼申し上げます。

 有難う御座いました。

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