
永島さんは五十年も教育に携わり、俳句は「白魚火」「街」の同人。朔出版、2025年2月28日発行。長島さんは松江の人。個人的には何も存じ上げないのだが、好きな句が沢山あった。それでブログに挙げさせた戴いた。
自選12句は次の通り。一句目は「街」の今井主宰に褒められた句である。
ひとり旅春爛漫の皿うどん
いづくにか冨あるごとし開花待つ
すかんぽや一人が親の長靴で
豆飯炊く小泉八雲の妻のセツ
夏のイベントに上顎の皮が剝け
草むしり海みえてきて流人めく
朝顔のたねも遺品と言ふべきや
さびしさは萩の周りを刈りてより
テレビ消し夜寒の壁となりにけり
望郷やマスクの触るる耳の傷
何も足さず何も減らさず注連綯へり
あたたかや旅の荷物が先に着き
私の好きな句は、かなり多かった。次の通り。(*)印は自選と重なった。
012 試食して夫婦異なる梨を買ふ
016 譲られし電車席より花の山
018 水澄みてはや音すめる松江かな
030 暫くは投げらるる番寒稽古
035 帰省子に短き無人駅ホーム
038 鯔とぶや豆腐を買ひに鍋さげて
060 料峭や首の付け根に脈さがす
066 蹴るに良き缶から一つ敗戦日
068 草刈りのしばらく後を蜻蛉わく
079 雪だるまやさしき国に坐りをり
083 すかんぽや一人が親の長靴で(*)
089 繍線菊(しもつけ)やそろそろ富山の薬売り
090 海の家ベニヤにバスの時刻表
110 あらせいとう脚を斜めに座るひと
115 恙なき今日大きめの冷奴
117 百日紅隣街から穴掘りに
129 ゆうべの猪らし軽トラの立ち話
138 町内会議駄菓子と蜜柑持ち帰る
159 検眼の輪に切れ目無く秋深む
189 水底へつづく石段鯊日和
イチオシは次の句。
117 百日紅隣街から穴掘りに
何のことかよく分からない。だが、不思議に魅力がある。何も言おうとしていない。そこが良い。なかなかこのような句は作れないものだ。作ったとしても発表しずらい。どうしても何か言いたくなる。そこを諦めた。読者を信頼して、任せた句。
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