小川楓子句集『ことり』
小川楓子さんは2008年から「海程」に参加し金子兜太主宰に師事、2010年には山西雅子の「舞」創刊時に入会。海程新人賞、舞賞など受賞。『超新撰21』にも参加。若手のホープである。この句集、表紙は明るく落ち着いた茶系の無地に近いもの。それだけに自己主張を抑えた印象がある(内容...
小川楓子さんは2008年から「海程」に参加し金子兜太主宰に師事、2010年には山西雅子の「舞」創刊時に入会。海程新人賞、舞賞など受賞。『超新撰21』にも参加。若手のホープである。この句集、表紙は明るく落ち着いた茶系の無地に近いもの。それだけに自己主張を抑えた印象がある(内容...
鈴木さんの句集『青水草』は、コールサック社が2022年5月30日付けで発行した氏の第一句集である。「沖」(能村研三主宰)と「花林花」に所属し、2017年には、登四郎と六林男に関る評論で、俳人協会新鋭評論賞を貰っている気鋭の俳人である。...
大牧広さんの全句集を読む機会を得た。全句業を俯瞰できる高著である。ふらんす堂、2022年4月12日発行、仲寒蝉、小泉瀬衣子編集。 栞は、次の四人の方々が書かれている。 高野ムツオは、俳句は弱者の文学だと言った佐藤鬼房を引き「大牧広にもこれに通ずるものがある。(略)広は戦後の...
まず「海鳥」の川辺幸一代表の急逝を心からお悔やみ申し上げます。コロナ禍が小康状態となったため、新百合ヶ丘で俳句の行事が催されました。そこで川辺さんにお会いできると楽しみしていたのですが、多分その日に亡くなられたのだろうか、お会いできなかった。...
梅津さんは、山本一歩主宰の「谺」の創刊同人で、現在は同人会長。俳句は30年も前に、小林康治「林」主宰のときから始めている。文學の森、令和四年五月八日発行。 冒頭に山本一歩主宰の祝句がある。集中の〈梅咲いて特に主張は無かりけり〉を受けたものであろう。...
この句集を読みながら私は、堀本さんが第一句集『熊野曼荼羅』で俳人協会新人賞を取られ、颯爽と俳壇にデビューしたころを懐かしく思い出している。東大のキャンパス内にあるレストランで出版記念の会があり、出席したこともあった。 『一(いち)粟(ぞく)』はその後十年の第二句集。2022...
高柳克弘と言えば、句集『未踏』(2009年6月22日、ふらんす堂発行)の ことごとく未踏なりけり冬の星 くちびるのありてうたはぬ雛かな などのイメージが私の胸底に沈着している。だから今回の『涼しき無』(2022年4月27日、ふらんす堂発行)を一読して私は、この句集は求道の士...
松野さんの第三句集。角川文化振興財団、2022年4月15日発行。彼女は、「街」(今井聖主宰)の同人会長で、2016年に角川俳句賞を貰っている。俳歴50年ほどで、2009年から21年にっけての作品を収めている。 自選句は次の10句。 春の日や歩きて遠き船を抜く...
該著は「宇宙」主宰の島村正が、俳句評論を軸に、エッセイ・俳句をまじえ、自分史を鮮明にする意味をこめて纏めた一書である。令和四年四月一日発行。 小生は、その中から「誓子山脈の人々」と「形影相伴う師弟」の二節に興味を覚え、熟読した。「誓子山脈の人々」の節では、「天狼」を駆け抜け...
高木晶子さんは結社「京鹿子」の人。昭和46年に加入されておられるから、もう50年になる。ずっと鈴鹿野風呂記念館の図書管理の仕事を続けられており、京鹿子新賞や野風呂賞を貰っている。この句集は第二句集で、東京四季出版が令和4年4月15日に発行した。序文は鈴鹿呂仁主宰。...
熊沢さんは仙台市の人で、柏原雨民主宰の「きたごち」の重鎮。昭和6年生まれだから、90歳になられる。その第二句集。文學の森、令和四年四月十五日発行。跋は柏原主宰。 以前、「きたごち」のメンバーが東日本大震災後の数年間の経験を句にしてアンソロジーを出された。小生はそれを読んで、...
中原道夫「銀化」主宰の句集『橋』を詠む機会を得た。発行は書肆アルスで、2022年4月1日。中原主宰の第十四句集であるようだ。 氏は、卓抜な機知を駆使し21世紀の風狂の俳諧師と呼ばれていることは周知の通りで、代表句に〈白魚のさかなたること略しけり〉〈飛込の途中たましひ遅れけり...
久下(くげ)さんは俳句歴20年の方。埼玉県現代俳句大賞や埼玉文学賞を貰っていて、「紫」(山﨑十生主宰)の重鎮である。この『単眼鏡』は令和四年五月六日、現代俳句協会発行による氏の第一句集である。序文は山﨑十生主宰。下記の〈017 遮断機のゆつくり上がる春の雨〉は俳句を始めてす...
「春月」主宰の戸恒さんの自註句集(雙峰書房、2022年4月1日発行)で、24歳から53歳までの作品から選んである。氏が大蔵省に入省し、退職直後までの300句である。国内の旅吟以外に海外詠も数多く、その広範で濃密な経験が詠み込まれている。...
第六章 切字「た」の源流を遡る 兜太が切字の「た」を使い始めるまでと、その後の使用状況を、兜太の志向の変化を読み取るように、柳生氏の記述は進む。 連体形の「た」は「忘れた顔」とか「似た風」のように兜太の口語体の俳句に、初期からみられる。しかし下五の「た」は、どうも山頭火を兜...
柳生氏は兜太に深く心酔し敬愛した門下生で、「海程」賞や現代俳句協会評論賞を受賞している。この著は、株式会社ウエップから、2022年2月28日に発行された。 兜太に関する評論は多い。小生もわずかな記事を書いたが、最近では、井口時男氏の『金子兜太―俳句を生きた表現者』が兜太論で...
中内亮玄さんが編集・発行する『月鳴』の第三号である(2022年2月22日発行)。俳句に係わる紀行文や作品が掲載されている。会員は地元福井の方々が多いが、それ以外にも、関東やハワイ在住の方もおられる。 会員作品を読ませて戴いたので、感謝を込めて、おひとり一句に絞って、好きな句...
高野礼子の一〇〇句から 高野さんは「風の盆」の町、八尾町出身。祭の日々を除いては、山間の小さな静かな町といった感じである。あの物寂しい胡弓の音と、顔を笠に隠して踊る若い男女の姿が小生の脳裏に生きている。 現在は我孫子にお住まいで、そこで「遊牧」の塩野谷仁(「遊牧」前代表)さ...
第三部 中村草田男(ラザロの眼から詩人(ディヒター)の眼へ) 草田男の作品と論と来し方を丁寧に紹介している。しかも、各句集から主要な作品を抽いて、迎合することなしに論評している。この著『昭和俳句の挑戦者たち』の分量の約半分を占めている草田男論なので、小生のブログに別項をたて...
近藤栄治氏は、高柳重信についての評論により、第30回現代俳句評論賞を受けた評論家で、この著作のほかに『俳句のトポスー光と影』がある。俳誌「青垣」(大島雄作代表)の会員でもある。 本著は創風社出版、2022年3月1日発行。300頁ほどの論作で、副題の通り、第一部(約60頁)は...